研究概要 |
文化庁の意識調査などによると,多くの人々は相手に配慮した言動をとれるようになることを望んでおり,その知識を身に付けたいと考えている。しかし,現在のところ,配慮すべき状況や人間関係,その際の言葉遣いなどについて,具体的な指針になるような提案はなされていない。そこで,我々は,配慮の言語行動の具体的な運用方法の提案を目指して,近年,注目されている「行政と市民とのコミュニケーション」に着目し,配慮の言語行動に関する分析を行った。具体的には,市民が「配慮に欠けている」と感じる行政の言語行動に着目し,その具体的な事例を収集,分析することにより,どのような言語行動を,なぜそう感じたのかを検討した。平成18年度は,この検討をもとに,「配慮がない」言語行動のアンケート調査を行った。その結果,行政コミュニケーションにおいては,「態度がない」という評価が「配慮に欠ける」という感覚を呼び起こしている可能性が高いことが明らかになった。 本年度は,アンケート調査結果に基づき,行政コミュニケーションの現場における解決策について検討した。解決策には,1)行政職員のコミュニケーション力の向上,2)コミュニケーションの質を一定に保つ対話システムの導入の二つのことなる方向性が考えられる。本研究では,後者の設計に配慮の言語行動の対話戦略を取りいれ,2)の方向で問題解決を行った。 市民の意見を集める対話型アンケートシステムを用い,行政コミュニケーションの現場のひとつとして,市民参加型の空港計画について職員の代わりに対話をする実験を行い,その利用に関するユーザー満足度調査を実施した。この調査により,システムとの対話に対して好意的であり,コンピュータ相手の対話であっても,対話がきちんとなされていれば市民を軽んじているという印象は生じないことが明らかになった。行政コミュニケーションの多様な問題解決策の糸口が示された。
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