研究概要 |
本年度の計画は,2年間の研究成果をまとめることであった。具体的には,節レベルにおける文法化でしばしば指摘されてきた「緩く統合された構造」かち「よりしっかりと組織化された統合構造へという一方向性が,名詞カテゴリの問題が絡む関孫代名詞節構造の発達にどのように関係しているのかを調べ,名詞カテゴリと動詞カテゴリの平行性を主張するというものである。 通時的英語データを含む資料を分析した結果,関係代名詞節の発達については予想したとおり,構造的統合が強化される方向(非制限関係代名詞節>制限関係代名詞節)へと発達したことが確認された。この流れはthat系関係代名詞でもwhich系関係代名詞でも同じであった。したがって,文法化が進む除の節統合度にわる一方向性仮説にして,動詞カテゴリ(複数の節を含む構造)および名詞カテゴリ(関係代名詞節)との間に平行性が存在することをするサポート事例が得られだことになる。 しかし近年,節と節の結合度強化に関わる一方向性仮説に対する反例を報告する研究がいくつか出されており,それらの先行研究によりもたらされた知見をも考慮に入れて,異なる視点からも分析を試みる必要性を覚えた。特に,人間の言語コミュニケーションに根ざす,より本質的な問題に目を向けるべきではないかと考えるに至った。そこで,コミュニケーション参与者としての話し手の果たす役割に注目して分析をさらに進めたところ,関孫代名詞構造の発達で重要な役割を果たしたのは,話し手の聞き手に対する配慮であるという結論が引き出された。これはTraugottらの一連の研究で主張されている「間主観化の強化」という考え方に合致する。「節統合度の強化」という文化の一方向仮説よりも,間主観性の強化のほうが,言語変化と人間め認知の関係を捉える上でより重数なテーマになりうると考えられる。 以上の研究成果を,2007年度中に出版された2本の学術論文により発表した。
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