研究概要 |
2006年度では、基礎的な文献研究を踏まえ、BNC Online(小学館コーパスネットワーク)をCALL教室での自由英作文の授業に導入した。そして、言語データを閲覧させるタスクの開発とその位置づけに関して経験知を蓄積した。その結果、教師側がBNC Onlineから教育的に精選し配列した数行の例文(収斂型コンコーダンス)を利用し、発問を投げかけ、言語パタンに気づかせていく指導が効果的であることが分かった。 2007年度では、能登原(2004;2005)で明らかとなったEメールに見られる頻出動詞を踏まえ、さらに、フレーム意味論の考え方を軸にFrame Netを利用した導入法を考案した(能登原, 2007)。そして、学習者が習熟していると想定されるExperiencer_subj (e.g. like, love)のフレームを「学習のきっかけ」とする例文提示法を確立した(能登原, 2008)。 そして、最終年度の2008年度では、データ駆動型学習を本格的に授業に導入することで、2年目に確立した授業形態でその教育効果を検証する予定だった。しかしながら、(1)学習のきっかけとなる「頻出動詞」の妥当性・信頼性・実用性の問題、(2)フレームを拡張していく方向の教育的意義の問題、(3)実用的で効果的な導入法の問題、の3つの問題が残った。 そこで、この3つの課題のうち特に(1)と(2)の問題を解決すべく、近年公開された大規模学習者コーパス(JEFLL Corpus)を用い、自由英作文における日本人英語学習者の「頻出動詞」と「それに伴う語群」の特徴を大学入学前の状況に遡り再確認することとした。 調査の結果、(1)全ての学年(中学1年生から高校3年生まで)で、SV、SVC、SVOの3種類の文型に親密であること、(2)12種類の動詞のうち、中高生のどの学年においても、be(Occurren ce : States)、have (Possession)、like (Emotion)、go (Self-Motion)がよく使われることが確認された。一方、break (Action)、sell (Action Mid)、put (Caused Motion)、give (Transfer)については、相対的に未発達になりやすいことが確認された(能登原, 2009)。 これらの結果を踏まえ、学習者の親密度の高いフレームに関する例文から親密度の低いフレームに関する例文へと提示し指導しいく形で、収斂型コンコーダンスを導入することが望ましいとして本研究を終えた。
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