研究概要 |
本研究では近世日本における宗門改制度の意味と役割について検討した。本研究課題は,近世を通じて,全国で,ほぼすべての人々が共通に経験した唯一の制度といえる宗門改制度が,幕藩体制の中でどのような意義を持つか分析するものである。 昨年度に引き続き,最大のキリスト教信者が存在した九州地域を中心に資料調査を実施した。長崎歴史文化博物館をはじめ,九州大学附属図書館記録資料館九州文化史研究部門,九州大学付属図書館六本松分館檜垣文庫,天草アーカイブズ,西南学院大学博物,八代市博物館,大村市立史料館,奄美市立奄美博物館で調査を実施した。また九州地域の比較研究地域として,京都府立総合資料館,愛媛県立図書館,今治市関前支所で調査を実施した。 対象とする資料も,文献資料のみではなく,制度に関わる道具である踏絵や宗門手札,カクレキリシタンが所持していたメダイ,十字架などのモノ資料も調査することができた。特に本年度はカクレキリシタンの多い,長崎県の外海歴史民俗資料館,五島観光歴史資料館,堂崎天主堂資料館,五島市奈留のカクレキリシタン関係者からの聞き取り,及び資料調査を体系的に実施した。また昨年度に調査した文化期の天草崩れに関して,上田資料館所蔵の上田家文書と関係の深い崎津村文書(九州文化史研究部門)の宗門改帳,上田家日記の一部(檜垣文庫)を確認し,調査することができた。この調査により古文書,資料画像は,1万5千枚を超えており,この成果を元にして各地の宗門改制度に関する分析を進めていきたい。
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