研究概要 |
本研究は,自由の規制根拠として従来の「他者危害(回避の)原理」を中心とする規制原理のみのよっては,規制の正当性を主張することの困難な規制現象を捉え,現に機能しているにもかかわらず従来言語化されてこなかった規制原理についての理論的探究を行った。 このほか,ヒト胚研究と同様の論点を抱えるいくつかの題材にも取り組み(子どもからの脳死・臓器移植、生殖補助医療(代理母)に対する法的検討,重症な障害をもつ新生児への治療をめぐる問題),当事者間の合意と技術力等が揃い,実行可能であるとしても,なおそれが規制されるという我が国の(広義の)法状況についで検討した。この検討では,憲法上のプライバシー権を構成する観念としてのプライバシーに着目し(個人的プライバシーと関係的プライバシーの導出),特に関係的プライバシーの観念が,権利論の内部で現に果たしている役割(片務的負担の内在)、の存在を示し,ここから,本研究を発展的に継承するプライバシー権概念の再定式化に向けた研究の素地を作った。 なお,ヒトiPS細胞の樹立といった新たな局面を迎えて,さらに研究に対する規制の整備が注目される中で,本研究の権利論の取り組みは,政策との架橋という視角を持つものであり,この点で重要な意義を持つといえる。
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