研究概要 |
本研究の目的は,政府,事業者団体らが定める基準ないし標準が,競争と貿易を阻害せず,むしろこれを促進しながら,製品の安全性や互換性,相互運用性確保という目的を果たし機能するための規制・制度のあり方を追究することにあった。このためには,まず第一に,標準があまねく使われるようにしなければならない。ところが,近年では,標準採用にあたり必須の知的財産権を保有する者が当該知的財産権の許諾を公平に行わいことにより,標準の普及・採用活動を阻害する例が増え,問題となっている。本研究では,本問題ならびに標準化に関わる者らが対策のためにとっているスキーム・措置の実態を調査するとともに,これら対応・措置を独禁法に照らして評価し,さらには独禁法を適用することで本問題を解決することができないかどうかを考察した。標準に関する第二の課題は,標準が適正に策定・運用されることである。本研究では,WTO・TBT(技術的障害に関する協定)の運用実態ならびにこれを補完する諸制度,独禁法による規制について考察した。これらの研究成果については,論文等の形で公刊し,大学研究者や関係政府機関、企業らが参画する研究会において発表してきている。本問題は,学術上も実務上も重要であるわりには,専門的かつ分野横断的であるために取り組みがたい課題であるところ,本研究は本問題にかかる研究・政策形成ならびに実務に寄与したものと考えられる。なお,WTO・SPS(衛生と植物防疫のための措置)協定ならびに関連する規制・基準に関しては,2007年度中に知的財産権に関する大きな動きがあいついで起こり追加的調査研究を行わなければならなかったこともあって,公表にはいたらなかった。もっとも本課題について調査研究は済ませつつあるところでおり,2008年度以降,速やかに結果をまとめ,公表したいと考えている。
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