研究課題
若手研究(B)
本研究は、食品安全規制の相違に起因する紛争が国際問題化する中、GM食品の安全性をめぐる国際合意を事例として、食品安全規制をめぐる国際関係の特質を明らかにするとともに、国際的な合意形成のメカニズム・リスクガバナンスのあり方について分析した。最終年度である本年度は、かかる問題意識に基づくこれまでの研究を、関係機関の実務家(OECD、FAO、コーデックス、欧州委員会、米国FDA(食品医薬品局)等)へのインタビューにより検証した。その成果については、以下のとおり、学会(社会技術論学会)にて発表するとともに論文にまとめた(近刊)。GM食品の商品化とそれに伴う関係主体の多様化という環境条件の変化は、GM食品の安全性に関する国際政策システムの再編と変容をもたらした。この再編と変容のプロセスで重要な役割を果たしたのが、第1に「交渉の場(国際機関)」の特質・ルール(科学的議論の重要性、交渉の正当性を確保する要因(参加主体の包括性、協議実施機関のマンデート、透明性)の意義)、第2に、再編を促すアクター(特に議長国)の国際的なポジションと能力である。また、GM食品については総じて深刻な意見対立が存在すると思われているが、安全性に関する「科学的」議論(リスク評価のアプローチや手法のコアな部分)については科学者や規制当局者間の国際的なコンセンサスの形成が相対的に可能であり、調和が漸進的に進展していることが指摘できる。これに対して、いかにリスクを管理するのかという「政策的な」議論(リスク管理)については、社会的文化的経済的考慮に基づく国内規制の相違が存在し、それが国際的な合意を困難にしていることが明らかとなった。今後は、こうした「科学的」議論における国際合意の進展が、国家間の「政策的」な議論の調和に如何なる影響を及ぼすのかに留意して研究することを課題としたい。
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Proceedings, International Symposium on Food and Water Sustainability in China 2007, Jan 18 and 19, 2007 in Macau, China
ページ: 174-182