研究概要 |
平成19年度は,研究計画期間における最終年度にあたり,申請時に記載した研究計画に基づき,(1)初年度に設計したエージェントを用いてMASを構築し,(2)それにより得られた結果から購買者の潜在的行動パターンを進化論的に獲得する予定であった. (1)については,消費者の異質性の考慮が不可欠となる.これを実現するために,一般にマーケット・セグメンテーションでは,顧客を事前に与えられている変数群の類似度に基づいてクラス分けをする事前セグメンテーションと,観測変数が離散的分布をもった潜在変数と仮定し,その潜在変数の類似度に基づいて顧客をクラス分けするのが潜在クラスモデルを用いる手法がある.消費者の非計画購買にはこれら両方の性質を有するため,消費者の異質性を評価する新たな方法の確立が必要であることがわかった.(2)については,エージェントが移動した経路から進化論的に行動ルールを獲得するために強化学習を組み込んだモデルを構築した.ここでは,状態入力ベクトルの次元数の増加に伴う状態空間の増加の問題を回避するために,状態の粗視化方法を提案した.また,エージェントが学習を効率良く行える仕組みを導入することで,少ない実行回数の中で潜在的な行動パターンを進化的に獲得することが可能となった. 平成19年度は,(2)が主な研究内容となったため,今年度中に予定していた仮想店舗を用いたシミュレーションを通して,より実用的なモデルの構築を実現するまでは至らなかった.今後,(1)の非計画購買に関する消費者の異質性の評価方法を確立し,消費者の行動を売り場状況要因と合わせてシミュレーション分析する予定である.
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