研究概要 |
近年、社会関係資本やソーシャル・キャピタルが脚光を浴びているが、その中でもネットワークの指標は、主観的なものから客観的なものまで様々な測定の仕方がある。例えば、社会的資源を測定するためにしばしば用いられる地位ジェネレータは測定が簡便で効率がよいが、指標の妥当性・信頼性を明らかにする研究が十分に蓄積しているとはいえない状況にある。 本研究では、大阪府吹田市、東京都世田谷区における無作為抽出による郵送調査データを用いて比較分析を行った。社会的ネットワークの指標の一つとして、社会階層と社会移動に関する全国調査1995年B票調査で用いられている地位ジェネレータを参考に、親戚・近隣・友人におけるネットワークについて分析を行った。その結果、(1)両地域における社会関係資源を表す潜在変数の測定不変と地位ジェネレータの枠組みの支持、(2)その上での、医師・弁護士などの専門職、会社の社長や役員、小売り店主・飲食店主などで表される社会関係資源における有意な地域差、などについて、平均構造モデルでの分析結果を得た(n=945,CFI=98,df=122,χ2=182.4,χ2/df=1.5,RMSEA=.03,IMPS 2007,the 15th International and 72nd Annual Meeting of the Psychometric Societyにて発表)。今後、新たに実施した群馬県桐生市における調査データを含めての分析により、分析・知見の一般性の確認と地域差の切り分けを進め、地位ジェネレータによって構成される社会関係資源/他の測定方法によるネットワーク指標と、社会階層変数の関連を分析することで、経済的な側面以外の格差メカニズムに注目していくことが重要である。
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