本研究は幼児期の仲間関係の発達に関する研究である。特に近年、保育所や幼稚園といった乳幼児の集団活動の場において知的発達には何ら問題がなく、また障害の診断基準にも当てはまらないにも関わらず、集団活動ができない、友だちとうまく遊べない、さらには情緒の自己コントロールができないといったいわゆる「気になる」子どもの存在がクローズアップされてきている。このような子どもたちの支援を考えるためにも本研究では、幼児期の子どもたちの集団活動場面における社会的相互作用行動を観察し、子どもたちの仲間関係を検討する。そこで本研究は、保育所において保育者からあげられた「対人関係がうまくいかない」と考えられている幼児を選出し、朝の自由遊びの時間から給食までの時間の行動を観察した。 その結果、保育者が保育に困難を示すと考えられる幼児は、他の幼児よりも一方的に会話をしている場面が多く見られた。また「はい」「いいえ」といった明確な返答を必要としない文脈においては、場にそったやりとりをすることが困難であることが示唆された。さらに保育に困難を示す幼児は、他児よりも場に沿った持続した会話が少ないことが明らかとなっている。 また保育に困難を示す幼児は情緒的に不安定になることも多く見られた。遊びの中で何らかの拒否にあうという場面や自分の意図通りに相手が行動しないといった場面に遭遇すると、他児に対して暴言を吐く、物を投げる、怒りながら(または落胆しながら)その場を去るという行動が頻繁に見られた。
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