本年度は、前年度に作成・実施した質問紙調査の集計・分析を行った。その内容は、次のとおりである。調査対象は、鹿児島県内の公立小学校91校に勤務する298名小学校教師(管理職や養護教諭を除く;男性139名・女性159名;僻地勤務を含む)。調査項目は、勤務環境・教育環境・地域環境に関する項目、ストレス反応尺度、場面別対人ストレッサー尺度、職場環境ストレッサー尺度、ストレスコーピング尺度、強迫性格尺度等である。ストレス反応に影響を及ぼす要因についての分析からは、(A)「教師同士の関係」と「多忙さ」がストレス反応の生起に大きな影響を及ぼしていること、(B)コーピング(「放棄・諦め」「肯定の解釈」)とパーソナリティ(強迫性格)の影響も、考慮すべき重要な側面であること、(C)「職場以外の人間関係」もストレス反応の生起に関連が深いことが明らかになった。なお、勤務地によるストレス反応の差は認められなかった。次に、コーピングスタイルとストレス反応の関連の分析からは、(D)「放棄・諦め」と「責任転嫁」のみを多用するスタイルは、ストレス反応の生起と結びつきが最も強いこと、(E)全般的にコーピングの使用が少ないスタイルも、ストレス反応の生起と関連が深いこと、(F)"関与"するコーピングのみを多用するスタイルは、必ずしもストレス反応の軽減に成功していないこと、(G)「肯定的解釈」と「計画立案」をやや多く用いるスタイルと、多面的にコーピングを使うスタイルは、ストレス反応が少ないことが明らかになった。以上を総合すると、(1)教師の心理的ストレスは多様な側面から構成されることが認められ、(2)コーピングスタイルは、問題解決的・接近的なコーピングだけを使用するよりも、その他のものも組み合わせてバランスよく使用するほうがストレス反応を軽減させやすいことが明らかになり、教師支援においてはこれらの点に留意することが求められているといえる。
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