研究課題
若手研究(B)
本研究は、バウム技法の主観的体験様式を、可能な限り言語化していこうとする試みである。描画過程は、そのプロセスが内的なものであるため、それを言語に落とすことが非常に困難である。そのプロセスを問うても「なんとなくそう思って」としか表現できない、無意識的な領分に属する体験となる。本研究は、その体験を、戸惑いや迷いが生じる際の"ゆらぎ"体験を通して明確にしようとする研究であった。研究を進めるにつれて、"ゆらぎ"体験の言語化はあまりたやすいものではない事が明らかになった。そこで、バウム技法の体験様式を明らかにするために、描出されたバウム画をイメージで把握しその言語化を求めるという方法に着目し、描かれたバウム画に絵で返答を返すという「バウム返答法」の創案に至った。それが描き手の体験とパラレルであるかは今後の研究を待たねばなるまいが、バウム画の解釈を外在する基準に求めがちな原稿のバウム画解釈法に、別の視点からのアプローチがありえることを示唆するものであると思われる。この「バウム返答法」は、精神分析で云われる逆転移の活用にも似た、生身の人間の出会いであるからこそ必然的に引き起こされるわれわれのイメージの共揺れを俎上に乗せる、心理臨床の現場感覚に根ざした方法論の可能性を示すものであるだろう。
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学生相談研究 第29巻第3号
心理臨床学研究 第26巻第3号
成安造形大学学術活動報告