研究概要 |
コンピュータを使うとき,ユーザは能動的にコンピュータに働きかけ,その操作に対するコンピュータの応答を知覚し,さらに次の操作を選択・実行する。マウスクリックパラダイム(mouse clickparadigm)は,このようなコンピュータ作業中に脳波を測定し,コンピュータに対する操作(たとえばマウスクリック)の時点にそろえて加算平均を行い,事象関連電位を求める方法である。昨年度の研究により,ボタン押し後の事象関連電位(特に,潜時300ミリ秒以降に生じる陽性電位)に,ユーザの期待とコンピュータの応答の不一致が反映されることが示された。本年度は,複数の選択肢(ボタン)からユーザが自由に選んで反応する状況において,ボタン押しの直後に呈示される反応フィードバック音に対する事象関連電位を測定した。その結果,期待とは異なるフィードバック音に対して,2種類の陽性電位が生じることが明らかになった。一つは,直前の刺激と知覚的に異なる刺激が呈示されたときに生じる中心部優勢のP3 (P3a),もう一つは,刺激の知覚属性とは関係なく,行為の結果と期待との認知的ミスマッチを反映する頭頂部優勢のLPP (late positive potential)である。これらの電位は,課題を繰り返し行い,期待とは異なる刺激が呈示される場合があることをユーザが認識した後にも生じた。以上の研究成果を,これまでのデータとあわせて国内・国際学会で発表した。さらに,事象関連電位の波形を分析するときの注意点を解説記事にまとめて発表した。
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