研究概要 |
19年度に実施した研究の成果は以下の通りである. 1. 平成18年度の研究を元に,運転者の眼映像をリアルタイムで画像処理し,眼瞼の開き具合(開眼率と呼ぶ)を計測するシステムを開発した.この開発した開眼率測定装置を用いて,様々な覚醒状態での開眼率を夜の運転場面を模擬した環境下で計測した.また,この際,運転者の覚醒状態を客観的に調べるために,脳波計測も合わせて行った、その結果,開眼率の低下に伴って,運転者の反応時間が延長することが明らかになった.また,その反応時間の標準偏差も大きくなることが示された.一方,脳波の周波数分析結果と,運転者の反応時間との間には直接的な関係は見られなかった.これは,脳波の周波数分析による評価では,開眼率計測による評価よりも時間分解能が低いために起こったと考えられる.このことから,提案した開眼率を用いた反応時間推定は,非接触で計測できるという利点だけではなく,精度および時間分解能も高いことが明らかになった. 2. 開眼率および開眼度を計測する際のカメラの写角について検討した.運転時に運転者の頭部が動く範囲を, Driving Simulatorを用いて調べた.その結果,カメラの水平写角を5.23°(カメラと眼部までの距離を78cm,カメラの光軸と眼部の移動面とのなす角を60°とした場合)に設定することで,片眼の眼瞼裂を撮影範囲内で撮影できることが分かった.また,この撮影条件であれば,頭部を回転させる運動を行った場合や,一度降車し,再度乗車した場合でもカメラの撮影範囲内で眼瞼裂を撮影することが可能であることが明らかになった. 3. 自動車運転中に,自分の反応時間にどの程度の遅れが生じるのか,また,それがどの程度危険な状態なのかということを,リアルタイムで運転者に知らせるためのシステムを開発した.このシステムでは,車両の速度,車間距離,運転者の開眼率,個人特性などのデータに基づいて,運転席に設置したPDAの画面に現在の衝突確率(POC)を表示する.この装置をDriving Simulator上に設置し,その有効性を確認した.
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