研究概要 |
東海地域(愛知,岐阜,三重県内)における初期公民館の成立・展開過程,運営組織,事業・講座の内容等が,当時の状況をリアルに伝える関係者の証言もふまえつつ,明らかにされ,その特質が析出された。 敗戦後の混乱期のなかで,初期公民館は,地域において,「むらの自治的活動の拠点」,「生産活動の技術学習的拠点」,「青年の学習・教育の場」として機能し,そこでは,(1)生産,(2)町村自治,(3)生活福祉にかかわって,多彩な活動がくりひろげられ,初期公民館が,村づくり運動推進の中心機関として位置づいていたことを明らかにした。そうした初期公民館の活動には,戦前の地方改良運動に象徴される国家的な(=上からの)地方経営に従属した社会教育を乗り越え,住民主体の内発的な地域形成を志向する可能性が伏在していたといえる。 また,初期公民館が,地域住民の生活課題を解決するための学習・教育機関として機能していたことが明らかにされている。 こうした地域における初期公民館の取り組みの中で,社会教育の自由と自治の公的保障という教育的価値とそうした教育的価値を具現する施設としての公民館の捉え方が形成され,初期公民館がその実質的機能において,地域の現実や住民のリアルな生活要求に関わる民主的な社会教育実践を生みだす基盤を構築していったことが明らかにされている。こうした過程に,自らのリアルな生活要求を実現するものかどうか,自らの生活向上・生活改善を保障する制度であるかどうかという視点から公民館を選び取り,その制度を活用し,自らの生活向上・生活改善を実現していく住民の姿をかいま見ることができる。
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