研究概要 |
前年度の研究より,行動障害支援マニュアルは,(1)行動障害アセスメントシート[(1)行動問題のアナログ記録シート,(2)行動問題のMASシート(Motivation Assessment Scale, Durand & Crimmins, 1992)]+(2)行動障害支援方略シート+(3)評価のための行動記録シートから構成された。本年度は,その行動障害支援マニュアルによる効果を検討するために,以下の2つの研究を実施した。【研究I:福祉現場における行動障害支援マニュアルの効果(事例的検討)】福祉現場における自閉症成人における行動障害に対し,その指導者を対象とした行動障害支援マニュアルの教示および指導者による記録および支援行動へのフィードバックを随時実施しながら,その効果を検討した。その結果,行動障害の低減につながった。しかし,行動障害支援マニュアルに加えて,相当(時間・経費等のコスト的に)のコンサルテーションが必要となったことが課題とされた。【研究II:保育現場における行動障害支援マニュアルの効果(研修会方式による検討)】保育現場において実際に自閉症児における行動障害に対応する指導者に対し,行動障害支援マニュアルに関する講義および演習(各回2時間×4回)を実施し,その後,月1回程度のコンサルテーションによるフィードバックも実施した。行動障害の低減,他の子どもへの波及効果,指導者が主体となった新たな支援実践の増加,行動論的知識の増加(KBPACの得点増)などが示された。以上のことより,行動障害支援マニュアルの効果が実証できた。事例の特異性や重篤性が高い場合,支援環境の制限等が大きい場合にはコンサルテーションの必要性も加えられた。
|