研究概要 |
本年度は,3年間の研究計画の2年目であり,初年度に引き続き関連文献の研究レビュー,また新たに性同一性に関する調査研究,性同一性障害の発生メカニズムに関する調査研究を行った。 1.研究レビュー:性同一性障害,さらに関連分野である同性愛・両性愛(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル)や心的外傷(トラウマ)について,主に臨床心理学・対人援助実践の切り口から文献レビューを行った。これに関する成果は,図書3件,論文1件として発表した。 2.性同一性に関する調査研究:1.の研究レビューから,性同一性に対する関連要因についての研究の必要性が生じた。169名に対する調査結果から,性同一性と,性役割や同性愛に対する態度との間の関連の様態を明らかにし,国際学会にて1件の発表を行った。 3.性同一性障害の発生メカニズムに関する調査研究:1.の研究レビューから,性同一性障害当事者のメンタルケア手法の開発のために,この障害の発生メカニズムを明らかにする必要性が生じた。性同一性障害当事者693名に対する調査から,諸外国における知見と同様に,日本においても男性から女性への性同一性障害当事者の出生順位と同胞性比に特徴があることが明らかになった。この結果について学会発表2件を行った。 日本においては,性同一性障害当事者の戸籍性別の変更が認められ,社会的な認知と理解も徐々に進みつつあるが,メンタルヘルスや心理社会的適応に関する知見は乏しい。上述の結果は,性同一性障害当事者のストレス軽減のための手法の開発に寄与する結果である。
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