研究課題/領域番号 |
18740020
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
代数学
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大野 泰生 近畿大, 理工学部, 助教授 (70330230)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2008
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2007年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2006年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 数論 / 概均質ベクトル空間 / ゼータ関数 / 3次形式 / 2次形式 / 特殊値 |
研究概要 |
概均質ベクトル空間のひとつである2元3次形式の係数のなす4次元ベクトル空間において、新谷が扱った格子とは異なる格子の取り方が2系統ある。この2系統の格子に付随して定義される16個のディリクレ級数について、東京大学大学院数理科学研究科の谷口隆氏、金沢大学理学部の若槻聡氏と共同で研究を行い、これらの間の関数関係式を導くとともに、解析的な研究を行い付随する局所ゼータ関数に関する結果も得た。これらは現在、論文の形にまとめまもなく投稿する予定である。また、導いた関数関係式の他にもやや複雑な関数関係式が隠されているとの予想も得ているため、この2研究者との研究は現在も継続して進展している。 概均質ベクトル空間に関してもう1件の課題は、上越教育大学の中川仁氏との共同で遂行している3元2次形式のペアのなす12次元ベクトル空間の研究である。この空間に付随するb関数の(monicでない)具体的な形を計算し、この空間のゼータ関数の一般論から存在がわかっている方の関数等式の系数行列が特定された。これにより、今後この空間で予想される非自明な関数関係式を仮定した関数等式の単独対称化を容易に行うことができ、ゼータ関数の書き下ろしの予想を検討する上でも有用となる。 多重ゼータ値に付随して定義される2変数可換多項式環について、早稲田大学理工学術院の奥田順一氏と近畿大学理工学部の井原健太郎氏とともに研究をおこない、等号付き多重ゼータ値に付随する代数から、等号なしの多重ゼータ値に付随する代数への写像を定式化し、この写像による引き戻しを考えることにより、導分関係式の等号つき多重ゼータ値版を定式化した。これを用いて、M.E.Hoffmanが提案している有理数体Q上の多重ゼータ値環の基底に関する予想について、等号つき多重ゼータ値において同様の予想を考えた場合に、リーマンゼータ関数の特殊値は偶数点であっても奇数点であってもこの基底により表記できること、またその具体的表示を証明した。派生的結果として、巡回和公式も等号付き多重ゼータ値においては、右辺がリーマンゼータ値の有理数倍になっているため、左辺がHoffmanの予想基底で書けることが判明する。また、過去に近畿大学理工学部の青木貴史氏との共同研究で得た、等号つき多重ゼータ値の重さと高さを固定した和に関する公式も同様である。これらにより、等号つき多重ゼータ値版のHoffmanの予想を支持する結果を多く得ることができた。また、奥田氏・井原氏とはこの2変数非可換多項式環におけるcircle積の研究も遂行し、多重ゼータ値および等号付き多重ゼータ値とそれらのqアナログについても統一的に扱える結果を複数導いた。更には、奥田氏・井原氏・梶川氏との共同研究において、多重ゼータ値と等号付き多重ゼータ値の巡回和公式の等価性について以前得た証明を、多項式環のレベルでの証明にする取り組みを重ね、概ね完了している、この完了を待って、等号付き多重ゼータ値の導分関係式とHoffmanの予想基底に関する成果を含む準備中の論文を仕上げて投稿する予定である。
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