研究概要 |
本研究の目的は、多様体に商特異点を許した軌道体(以下、V-多様体と記す.)におけるゲージ理論を展開することにより、3次元多様体のホモロジースピン同境捻れ不変量を構成し、3次元多様体のホモロジースピン同境単位的半群の構造を解明することにある.特に,古田幹雄氏と亀谷幸生氏によって証明された10/8・不等式をV・多様体へ拡張することにより、一般の3次元多様体のホモロジースピン同境不変量を構成し、一般の3次元多様体の同境圏を対象とした研究が可能となった.本年度の研究では主に以下の結果が得られた. (1)w・不変量を応用したBounding genusの決定 筆者は、V-多様体に対する10/8-不等式の応用として、古田幹雄氏との共同研究で導入したRohlin不変量の整数持ち上げを与えるホモロジー同境不変量(w・不変量)を用いることにより、松本幸夫氏によって導入されたホモロジー同境不変量(bounding genus)に対する評価を与えた.さらに、松本氏によって提示したBrieskornホモロジー球面の一連の無限族に対して、bounding genusの値を具体的に決定した. (2)3次元多様体の同境と,ホモロジー環の間の準同型に関する圏論的考察 3次元多様体を対象とし,それらの間の同境を射とする圏に対して,次数付き可換環を対象とし,それらの間の環準同型からなるある種の射からなる圏を構成することで,それらの圏の間にはホモロジー関手を定めることが出来る・古田-亀谷・10/8-不等式を,V-多様体に拡張することにより,特にグラフ多様体の組に対して,それらのw-不変量の値,および次数付き可換環とその間の代数的射の組に対して定まるある種の形式的多元環によって,その代数的な射を実現する同境が存在するための障害が与えられることを証明した.
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