研究概要 |
本年度は計画の最終年度であり,H18年度に実施したSmOs_4Sb_<12>の硬X線光電子分光に続き,以下に述べる実験を行うとともに,Pr,NdおよびSmを充填したスクッテルダイトに対するバルク電子状態についてまとめた.実施した実験は,(1)軟X線光電子分光によるSmOs_4Sb_<12>のフェルミ準位近傍の電子状態の温度変化,(2)硬X線光電子分光によるPrRu_4P_<12>における金属絶縁体転移に伴う価電子帯電子状態変化の観測,(3)軟X線光電子分光によるNdOs_4Sb_<12>の価電子および内殻電子状態の観測,(4)硬X線光電子分光によるPrFe_4P_<12>の電子状態の温度変化である.本研究計画当初は,軟X線を用いた光電子分光のみを計画していたが,よりバルク電子状態に敏感な硬X線による光電子分光が利用可能になり,希土類3d内殻を中心によりバルク敏感な光電子スペクトルを得ることに成功した.特に,PrRu_4P_<12>におけるT=60Kでの金属絶縁体転移に関して,硬X線光電子分光とクラスターモデル計算の結果から伝導電子と4f電子との間の強い混成が転移に寄与している一方で,この混成が金属相から絶縁体相への変化に対しては鈍感である(安定している)ことを見いだした.またPrFe_4P_<12>との比較を通して,この系で見られる異常物性が充填スクッテルダイトの特異な結晶構造に由来していることを明らかにした.H18-19年度の研究から,希土類充填スクッテルダイトにおける結晶構造と異常物性の密接な関わりをSmとPrの両方の系において確認した. 上記のような研究結果に対して,第15回真空紫外分光国際会議(VUVXV)において発表すると共に,論文4報にまとめた.
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