研究概要 |
単層カーボンナノチューブ(SWNT)内部でのガスハイドレート形成を明らかにするために,その基礎実験として核磁気共鳴(NMR),X線回折,電気抵抗測定,および古典分子動力学(MD)シミュレーションの手法を用いてSWNTの内部ナノ空間でのメタン分子,水分子等の挙動を調べた。また,昨年度に見出されたSWNT内部の吸着水分子が雰囲気ガス分子に交換される"内包分子の交換転移"についても調べた。実験にはレーザー蒸発法で作製された平均直径1.34nm,2.0nmの高品質SWNTバンドル試料を用いた。メタンCH_4及びCD_4の^1H,^2H核のNMR測定を行った結果,SWNT内部に吸着したメタンは35Kで相転移を起こし気体から液体に変化し,さらに低温では固体状態にあることが明らかになった。また,固体状態のメタンは20Kでメタン分子の配向状態に関する相転移を起こし,分子の運動状態が自由回転運動からジャンピング的束縛回転運動に変わることを明らかにした。これらSWNT内部のメタン分子の挙動はMDシミュレーションによっても調べられ,その結果低温でのメタン固体の構造はSWNT内壁に沿って2次元三角格子を構成するようにメタン分子が配置された最密構造であることがわかった。また,平均直径2.0nmのSWNTに吸着した水の挙動を調べた結果,SWNT内部の水は220Kで液体固体相転移を起こすことが明らかとなった。さらに低温構造は平均直径1.34nmのSWNT内部で形成されるようなアイスナノチューブ構造ではなく,アモルファス状態にあることがわかった。また平均直径2.0nmのSWNTでもメタン分子と水分子の交換転移が確認された。
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