研究概要 |
昨年度に引き続き,断層帯の微細構造を解明するため,跡津川断層帯の1カ所(有峰湖の西側:大多和)に臨時観測点を設置し,地震観測を行なった.収録した波形を用いて,コーダ波減衰の空間分布の解明と減衰異方性の解析を行なった.解析の結果,相対的に断層帯内のみを通るパス上における減衰が断層の外側よりも大きい(断層帯内:100〜150;断層帯外:300〜500)という傾向が見られた.また,走向方向の不均質性としては,断層帯の中央部の減衰が縁辺部よりも大きい(Qの最小値:138)という傾向が見られた.次に,減衰異方性の解析を行なった結果,断層の走向と直行方向に振動するコーダ波の減衰が大きいことが分かった.これらの傾向は昨年度の解析からも検出されている.観測時期が異なるが同じ傾向が見られるということは,ここで検出した減衰構造の不均質性は,跡津川断層帯における普遍的な構造であると言える.以上の結果から,跡津川断層帯内では普遍的に断層に平行なフラクチャ群が卓越しており,特に断層帯の中央部のフラクチャ密度が高く,減衰が大きくなるという構造があることが明らかになった.このような構造不均質は,断層破砕帯の構造と地震発生との関係を考える上で重要である. さらに,箱根・足柄地域の4カ所に臨時観測点を設置し,地震観測を行なった.この観測の目的は,地震活動度の時間変化に関連した地殻構造の時間変化を減衰や異方性の解析から検出することであった.この解析については,予想に反して解析に用いることのできた地震数が少なかったため目立った成果が得られなかった.
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