研究概要 |
フレート運動による歪変動の自動分離と,ゆっくり地震時での歪変動場の同時再現のためのネットワークフィルターのアルゴリズムの高度化を行った。昨年に引き続き米国南力リフォルニア地域に開されているGPS観測網であるSCIGNネットワークの測点配置に基づき,シミュレーションデータを使ったテストを繰り返して、デザイン行列が良好な条件となるように最適なウェーブレット関数の設定を行なった。特に大きな問題となっている歪場再現め精度向上に重点を置いた解析技術の開発を行った。条件を様々に変えたシミュレーシュンの結果,SNRが大きな時にほある程度の再現性が見られたが,SNRが小さいと再現が難しいことが分かった。但し変位場の再現について良好な結果が得られており,本手法の能力と適用限界を明らかにすることができた。また日本においても,特に将来の南海地震前の前駆的地殻変動を想定したケーススタディーへの適用のためのシミゴレーションデータの作成も開始し,そのためのプログラム開発も行った。 本手法の実データでのパフォーマンスを調べるため,日本のGPS連続観測網であるGEONETで見つかっているゆっくり地震である1996年5月に発生した房総半島沖のイベントを記録したGPSデータに本手法を適用した。その結果,ゆっくり地震に伴う変位場を良く分離できることが分かった.本イベントはイベントの時定数も1週間程度と比較的短かったためにプレート運動の寄与が小さかったこともあり,プレート運動を考慮しなかったに解析も関わらず,結果にゆっくり地震の発生している期間に面積歪・剪断歪の急激な変化が明瞭に現れており,前述したように,SNRの高いケースについては,ネットワークフィルターによるゆっくり地震の高い検出能力が実証される事例となった。
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