研究概要 |
本研究の目的である広域風送塵の寄与および起源の特定を試み,古気候変遷の復元に有用な手法を確立するために,日本陸域の第四紀の火山噴出物に夾在するローム層および黒ボク土壌の元素組成・Sr同位体組成データの蓄積をすすめた.日本陸域の火山噴出物に夾在するローム層としては,鳥取県大山倉吉テフラの露頭より採取された,33万年前から現在に至るテフラ層およびそれに夾在するローム層を分析し,各テフラ層の供給源の違いによる地球化学的特徴から,夾在するローム層の起源と形成過程について明らかにし,外来ダストの影響を調べた. 分析した元素の中でKとCaが相反する変化パターンを示した.K濃度は火山灰質レスで高く,テフラで低い.一方,Ca濃度はテフラで高く,ロームで低い.Cr, Li, YはKに,Mg, Na, SrはCaに似た変化をそれぞれ示した.最上部からDKP(大山倉吉軽石;50ka)までは,テフラとロームの組成の違いが明瞭であるが,それ以深では違いが小さい.KとCaの関係をみると,露頭の上部・中部,下部,最下部で異なる特徴を示した.上部・中部(〜50ka)のロームは,テフラと中国黄土の間にプロットされた.このことは,中国黄土起源の風成塵の混入を示唆している. 大山火山噴出物の^<87>Sr/^<86>Sr比は低く比較的均一な値を示す.一方,夾在するローム層はいずれも直下のテフラ層より高い^<87>Sr/^<86>Sr比を示した.これらの結果は,元素組成結果と同様に,母材となる直下のテフラ以外にも外来ダストの付加があったことを示している.
|