研究概要 |
本研究課題は,噴火時には危険となる活火山の火口近傍において,自動的に噴出物を時系列採取するとともに,噴火現象・噴出物の堆積現象を記録することによって,噴出物の特性から噴火現象の時間推移のメカニズムを明らかにしようというものである.昨年度は,主に自動火山灰採取装置の開発を行い,桜島火山南岳火口から約2kmの地点において,装置の過酷な自然環境下での動作確認を行った.今年度は,より過酷な条件となる諏訪之瀬島火山で装置の試運転を行い,その結果を踏まえて改良機を製作した.その後,活動の活発化した桜島火山において観測を継続した. 火山灰採取装置については,1号機の試運転結果を踏まえ,改良機を2機製作した.課題であった軽量化(可搬性),回転部の精度向上を行った.また,設定変更・電源交換時の密閉部(機構部,制御部)への火山灰侵入を防ぐため,外付け電源,外部制御コントローラを製作した.採取間隔は1分単位での試料採取が可能になり,設定変更も容易になった.以上の結果,降灰があれば,天候に関係なくほぼ確実な試料採取が可能になった.更に,装置の複数設置により,風向き変動による降灰分布変化にも対応可能であることが確認された.今後,様々な分野(黄砂,花粉,有害物質の分布など)での応用が考えられる. 噴出物については,桜島火山の活動活発化と改良機の稼働が本年度末であったため,現在分析途中である.しかし,既に以前から噴火毎に映像記録と火山灰試料が得られているため,それらの比較により,火山灰の特性を用いた噴火活動度の評価手法を検討した.また,諏訪之瀬島については,昨年度考察した火山灰の特性とマグマの上昇過程の関係についてのモデルを裏付けるため,噴出物の解析を進め,噴火推移について議論した論文を準備中である.
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