研究概要 |
大規模火成作用の起源物質に関して新しい知見を得るために,これまで分析値が報告されていなかった大規模火成岩試料のリチウム(Li)の同位体比の測定を行った。本研究を遂行するにあたって,研究代表者が以前構築したLi同位体分析システムの精度は±0.8‰と微細な違いを議論するには精度が悪かったため,高知コアセンターに設置されている新型分析装置を用いて,±0.2‰以下と世界最高レベルでLiの同位体を分析できるようにした(平成18年度中に達成)。本年度(平成19年度)は実際にこの分析手法を用いて大規模火成岩試料を分析すると試料のLi同位体比は有意に不均質であることが明らかにした。 本研究では大規模火成岩の試料として海洋底試料を用いたが,これはマグマ生成過程において大陸地殻の影響を考慮しなくてよく,大規模火成活動の起源の調査研究対象としてふさわしいからである。しかし,海洋底の大規模火成岩は海洋底変質の影響を受けやすいという弱点を併せ持つ。特にLiはストロンチウム(Sr)と並んで海洋底変質の影響を受けやすい。そこで,海洋底の大規模火成岩試料のLi同位体比の海洋底変質の影響を評価するために本研究では,Li同様に二次変質の影響を受けやすいSr同位体と,あまり影響を受けにくいネオジム(Nd)の同位体組成をLi同位体と同時に測定した。その際SrやNd同位体に関しても高い精度が要求されるため,Liを分離i回収した後に抽出されるSrやNdの同位体比を熱イオン質量分析装置を用いて高い精度で決定できる分析システムの構築を本年度中に行った。そして,このLi-Sr-Nd同位体測定結果より,大規模火成岩試料のばらつくLi同位体比は,Sr同位体比と相関があり,二次変質の影響である可能性が明らかとなり,二次変質の影響のないLi同位体組成を明らかにすることに成功した。
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