研究概要 |
1.NH伸縮振動の観測,及び量子化学計算により,ピロールクラスターの水素結合構造の解明を行った。2量体はT字型,3,4量体は環状型で,NH-π電子間水素結合を形成することが明らかにした。また,クラスターサイズが巨大化すると,液体や固体の凝集系と類似の水素結合構造を有することを,NH伸縮振動数,及びバンド幅の解析から明らかにした。ピロールは生体内分子の最小構成要素として,様々な研究領域でモデル分子として重要視されているため,本研究で実験的に水素結合構造を解明したことは大変意義があると考えている。 2.NH伸縮振動の観測,及び量子化学計算により,巨大アンモニアクラスターの水素結合ネットワーク構造の解明を行った。クラスターサイズが1000から10000量体へ増加するに伴い,モード3の相対強度増加とバンド幅の狭帯化が観測されたことから,巨大クラスターでは固体結晶と類似の水素結合構造を有していることを明らかにした。クラスターサイズの増加と相状態変化の相関を,スペクトル形状の変化として直接的に観測できたことは,本研究課題を遂行する上で大きなブレークスルーとなった。 3.NH,OH伸縮振動の観測,及び量子化学計算により,ピロール溶媒和クラスターの水素結合構造の解明を行っている(現在,研究進行中)。水やアルコールを溶媒とした時,その種類に応じて水素結合構造が異なることを示唆する結果が得られている。現時点では,溶媒分子の数は数個レベルであり,本課題の対象である巨大水和クラスターへの到達はまだ遠いが,その第一歩となる研究という意味で大変意義があると考えている。
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