研究概要 |
面不斉アレーンクロム錯体とFischer型カルベン錯体を併せ持つ光学活性二核α,β-不飽和Fischerカルベン錯体の合成を行い,その両方の金属錯体の特性を複合的に活用した立体選択的な有機合成反応の開発を行ってきた。我々は,新たに合成した光学活性ホモ二核カルベン錯体に対して,アリルアルコールとNaHを作用させ,空気酸化を行うと1,3-メタルシフトを伴うアリル転移が起こり,97%eeでα-アリルエステルを合成できることを見出した。一方,光学活性ヘテロ二核カルベン錯体に対して,同様の反応を行うと,今度はアンチアルドール型生成物であるa^-アリルーβ-ヒドロキシエステルが92/8drで得られてくることが分かった。一方,金属配位子を持たない従来のα,β-不飽和Fischerカルペン錯体に対して,同反応を適用すると1,2-メタルシフトが進行して,β-アリルエステルが生成することかち,二核カルペン錯体に由来する独自の反応性であることが分かった。
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