研究概要 |
不活性な炭素-水素結合の高効率・高選択的な酸化触媒反応の開発に関する研究を行った。金属錯体と酸化剤の組み合わせによる高活性酸化活性種の発生法に関する検討を行い、生体高分子である木材パルプ中に存在する難分解性2次元および3次元ポリマーであるリグニンの酸化反応と、それに基づくパルプの漂白方法の開発を行った。分子状酸素および過酸化水素を酸化剤に用いたパルプの漂白を温和な条件下で行うための種々の検討を行った結果、銅触媒の存在下中性〜弱塩基性(pH8-9)の条件で過酸化水素を用いてパルプの漂白を行なうことにより、従来の強塩基性条件(pHll-12)よりも大幅に脱リグニン及び漂白が促進されることを見出した。用いる金属触媒としては、CuCl_2やCu(OAc)_2など種々の銅触媒が高活性であるが、VCちMn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Pd,Ru,Rhなどの他の金属触媒には、ほとんど触媒活性が見られなかった。塩化第二銅を用いる系では、窒素系の配位子を等モル添加した場合に漂白効率がさらに向上することが明らかとなった。本系は、中性条件で行なうことにより、'漂白効率が高まるばかりでなく、強塩基条件で起こるリグニンの黄変が起こらないこと、また、廃液のpH調整が不要であるという利点がある。
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