研究概要 |
イソシアニドは形式的に二価の炭素原子を持ち、炭素原子上に一対の不対電子と空の軌道を持つ分子である。従って、その構造から、求電子的または求核的にも反応する可能性がある。しかし、これまでの反応ではイソシアニドは求核的に反応する例がほとんどである。 逆にイソシアニドが求電子的な反応性を示すのは、RLiやEMgXやZnR_2などの強い求核剤を用いたときのみである。これは、イソシアニドの求電子性が低いためであると考えられる。そこで、イソシアニドをルイス酸により求電子的に活性化することで弱い求核剤、特に芳香族化合物との反応が進行するのではないかと考えた。実際、ルイス酸-イソシアニド錯体が、ホウ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンで知られているが、それらを有機合成へと応用した例はない。 種々検討を行った結果、ルイス酸存在下、求核剤にインドールを用いた場合に、付加が進行し、インドールの3位の炭素-水素結合へのイソシアニドの挿入した生成物が得られることを見出した。ルイス酸としては、AlCl_3, GaCl_3, In(OTf)_3などの13族元素を含むもので良好な結果が得られた。これまで芳香族化合物の炭素-水素結合へのイソシアニドの挿入反応は、光照射下での例及び、特殊な基質を用いた分子内での環化反応が1例、それぞれ報告されているのみであり、その一般性は低い。そこで、われわれの見出した、インドール炭素-水素結合へのイソシアニド挿入反応は芳香族イソシアニドやベンジルイソシアニドなど、様々な置換基を持つイソシアニドで良好に反応が進行することがわかった。さらに、インドール以外にも、ピロール、チオフェンや1,3,5-トリメトキシべンゼンなど種々の電子豊富な芳香環が適用可能であることがわかった。
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