研究概要 |
申請者らはすでに、レニウム触媒を用いることにより、芳香族炭素-水素結合(以下、C-H結合と表記)の活性化、および不飽和分子の挿入に引き続く環化反応により、各種環状化合物が得られることを報告している。そのうちの1つとして、芳香族ケチミンと各種アルデヒドとの反応による、イソベンゾフラン誘導体の合成がある(J. Am. Chem. Soc.2006,128,12376.)。その論文では、反応系中にオレフィンを共存させることにより、ナフタレン誘導体の合成へと展開した。本年度は、これら一連の反応における基質の適用範囲の拡大を行なうことに成功し、総合論文として報告した(Tetrahedron2007,63,8463.)。レニウム触媒を用いることにより、芳香環のC-H結合のみならず、各種ヘテロ芳香環のC-H結合の活性化にも成功した。C-H結合活性化に引き綾くイソシアナートの挿入が進行し、フラン、チオフェン、インドールなどの各種ヘテロ芳香族化合物を合成することができた(Chem. Lett. 2007,36,872)また、レニウム触媒のみならず、周期表においてレニウムと同族のマンガン触媒に用いることによっても、C-H結合の活性化が進行することを見いだした。その結果、C-H結合へのアルデヒドの挿入によるシリルエーテルの合成に成功した。この反応を不斉反応へ展開できることも報告した(Angew. Chem Int. Ed. 2007,46,6518.)。なお、本研究成果はAngew. Chem.Int.Ed.誌のHot Paperに選定された。
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