研究概要 |
本研究課題は多孔性金属錯体による動的光応答空間の構築と光連動性機能発現を実現することにより、細孔構造と細孔機能が1対1の関係で結びつけられているという従来の概念を覆し、外的刺激による細孔空間構造の制御の実現を目的としたものである。 光応答構造相転移および、外部雰囲気応答性の評価のために、まずLIESST錯体である[Na_<0.122>Co_<1.439>Fe(CN)_6]-5.1H_2O(1)、[Co^<III>(4,4-dmobpy)_2]_3[Fe^<II>(CN)_6]_2[BPh_4](2)(4,4-dmobpy=4,4'-dimethoxy-2,2'-bipyridine)、および[FeL_2][BF_4]_2(3)(L=2,6-di(1H-pyyrazol-1-yl)isonicotinic acid)を合成した。続いて前年度に構築した雰囲気可変型磁気測定システムを用いLIESST挙動と雰囲気応答性の精密評価を行った。その結果、錯体(2)は室温から400Kまで昇温する過程において、溶媒の脱着を伴った急激なスピン転移を示す事を明らかにした。また上記した化合物に関して低温において、光を照射しながら磁性及びIR測定を行った結果、光によって電子移動が誘起されるという興味深い結果を得ることができた。 光照射による細孔状態の変化を見積もるために、錯体(3)に関してレーザー光照射状態とレーザー光非照射状態のそれぞれの状態において放射光を用いた粉末X線回折測定を行い、回折パターンの解析を行った。 その結果、光照射によりスピン転移が誘起され吸着可能な細孔構造が拡大する事が明らかとなった。 このように本研究課題は、光照射という外部刺激によって吸着可能な細孔空間構造を制御できる事を初めて明らかにし細孔物質科学における新領域を開拓したといえる。
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