研究概要 |
液晶配向場におけるコロイド粒子による規則構造の形成について,アゾベンゼン誘導体の光異性化反応に基づく液晶相転移温度の空間光変調を利用して検討した。試料には,コロイド粒子として表面において液晶分子の垂直配向を誘起するように配向処理を施したシリカ微粒子(粒径=500ナノメートル)を用いた。コロイド粒子を分散させる液晶には,モル濃度で1%のアゾベンゼン誘導体を混合した低分子ネマチック液晶を用いた。液晶コロイドを等方性液体相から冷却するとコロイド粒子はランダムに生成するネマチック相から排出され,凝集することによって3次元ネットワーク構造を形成する。ここにアゾベンゼン誘導体の光異性化反応によって生成するシス体による不純物効果に基づき相転移温度を空間変調すると,ネマチック相の発生ドメインを制御することができ,コロイド粒子を任意の場所に凝集させることに成功した。現在は,1光束の紫外光を用いて照射を行っているので,コロイド粒子はスポット状に凝集するが,2光束にすれば回折格子の形成が可能となり,固体微粒子と液晶の間の大きな屈折率差を利用することによって高回折効率を有するホログラムの作成が期待でき,フォトニクスにおける新しい材料の創製に繋がる成果を得ることができた。また,これと平行して粒径がマイクロオーダーのシリカ微粒子(粒径=10ミクロン)を用いた2次元結晶構造の形成についても検討を行ったところ,コロイド粒子をネマチック相一等方性液体相界面にトラップし,相転移温度の空間光変調を利用して界面をゆっくりとスキャンすることによって,2次元結晶構造だけでなく部分的にコロイド粒子の積層により3次元結晶構造の形成も確認することができた。
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