研究概要 |
近年、ボトムアップの思想に基づいた機能を持ったナノ構造体や作製が盛んに試みられている.ナノスケール・分子レベルで分子の相互作用の制御が可能となり,走査型プローブ顕微鏡や分光学的手法を用いた表面構造解析も積極的に進められている.特に水素結合や配位結合などの超分子形成を利用した手法は、新しい機能を発現させる上で重要である.そこで本研究では、ポルフィリンやフタロシアニンなどの誘導体を構成部品として用い,電極表面において水素結合や金属配位結合を利用した種々のナノキャビティサイズを持ったナノ構造体の形成を電気化学的に制御することを目指し,走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いてその形成するための製膜の手法および機能を発現させるためのキーファクターに関する知見を得ることを目的に研究を進めた.平成19年度は,特に水素結合を利用したナノ構造体制御に的を絞って集中的にその条件を探索した.電気化学界面での電位制御による水素結合の形成を誘起しつつ,そこに配位させるコバルトや鉄などの金属イオンを溶存させ,金属イオンの電気化学的なレドックス反応を利用して金属配位結合の形成を試みることによって,ナノキャビティを制御の可能性を探った.しかし,電極界面における金属配位結合に起因する特徴的なナノ構造体の形成は得られなかった.一方,無金属体ポルフィリンのカルボン酸誘導体について,ポルフィリン骨格のプロトン化を利用して,硫酸イオンと水による共吸着構造上でポルフィリンのカルボン酸誘導体がナノキャビティを形成することを示す結果が得られた.これらの結果は,ポルフィリンのカルボン酸同士の水素結合ばかりではなく,硫酸イオンと水の共吸着構造との静電的な相互作用も影響を与えることを示しており,電極界面における超分子形成には,基板との相互作用も巧みに利用することで分子間相互作用も精密に制御されることを見出した.
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