研究概要 |
本研究では、高温高圧反応によって、14族元素を中心とした典型元素からなる新しい半導体ネットワークの構築と、新規超伝導体の合成を目的としている。最終年度となる本年度(19年度)に得られた主な結果は以下の通りである。 1.一連のSm-Ge二元系新化合物の合成と構造、物性評価 SmとGeの混合比を様々に変えて13万気圧、1000〜1300℃で高温高圧反応を試みたところ、超伝導化合物であるLaGe_5と同形構造のSmGe_5,Cu_3Au型構造を持つSmGe_3,およびYGe_3型層状構造を持つSmGe_3の三つの新化合物の合成に成功した。SmGe_5については単結晶を得ることができ、その結晶構造の詳細を解析した。本化合物は金属伝導性を示すが、電子軌道計算から、そのフェルミ準位付近のバンドは、Geの4p軌道とSmの5d軌道が混成して出来ていることが明らかになり、Smは骨格に電子を供与するだけでなく、軌道の混成をとおして伝導バンドの構造にも関与していることが明らかになった。また、SmGe_3の組成を持つ二つの多形は合成条件の微妙な違いによって生成する。 2.半導体ネットワークの一部を白金で置換した化合物の合成と物性評価 LaPtGe_3,EuPtGe_3,SmPtGe_2を合成し、その電気伝導性、磁気挙動の測定を行った。とくにSmPtGe2は新構造を持つ化合物で、ピラセン(PiraceneC_14H_8)と同じ形状の部分構造が互い違いに積層し結合した興味深い構造をもつ金属化合物である。 3.超伝導化合物LaGe_3の単相合成と電気物性の評価 超伝導相LaGe_3の単相合成に初めて成功し、電気伝導度、磁化率、比熱などの物性測定を行った。更に軌道計算によってそのバンド構造を解明した。
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