研究概要 |
(1)ヘモグロビンを原料として用いて作製した炭素材料の熱処理条件の検討による触媒活性の向上 (1)炭素と高分子の中間状態(パイロポリマー)のヘモグロビンからの作製,ならびに,(2)ヘモグロビンパイロポリマーからの炭素材料作成時における不活性ガス気流中への二酸化炭素の添加により,得られた炭素材料の酸素還元反応に対する触媒活性が大きく向上することがわかった。また,炭素材料中に含まれる鉄のうち,酸素還元反応の開始に必要な二価の鉄の割合,ならびに炭素材料の比表面積がパイロポリマーの物性に依存し,触媒活性に影響を及ぼすことを明らかにした。 (2)原料にグルコースーアミノ酸-鉄塩を用いた天然物由来非白金系燃料電池正極触媒の作製 平成18年度に新たに発見したグルコースーグリシン-乳酸鉄から作製した非白金系燃料電池正極触媒(GGI)の高性能化のため,グリシン以外のアミノ酸を用いて正極触媒(GXI)を作製した。アミノ酸分子に含まれる窒素が多いほど触媒活性が大きいことがわかった。 (3)原料,熱処理条件を様々に変えて得られた触媒活性点の広域X線吸収微細構造(EXAFS)の分析 EXAFSスペクトルの分析により,活性点構造は鉄フタロシアニンの中心部分Fe-N_4に類似しており,GGI,GXIにおいては,出発原料中のアミノ酸の割合,アミノ酸分子に含まれる窒素が多いほど効率的に活性点が生成して活性点とならない鉄の割合が減り,さらに,ヘモグロビン由来の触媒の結果と併せ,Fe-N_4部分の周囲の構造規則性が高いほど耐久性が高いことがわかった。 以上の結果から,触媒活性は(1)活性点となる鉄の割合,(2)活性点の表面への露出,(3)二価の鉄の割合,耐久性は活性点周囲の構造規則性により決まることが明らかとなり,触媒能の向上のための基礎的知見が得られ,本課題の目的にかなった成果が得られた。
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