研究概要 |
本研究では,分子ナノワイヤーの構築を目指し主鎖が環状化した交互型シーケンシャルポリペプチドが形成するβ-sheet構造に着目した。環状ペプチドcyclo-(LK)8ならびに分子鎖末端にpyrene基を有する分岐状ペプチドbranch-(LK)8は,環化部および分岐部にアリル基を有する保護アミノ酸を用いて調製した。NaCl添加による2次構造の転移および蛍光特性評価は,Tris-HCl(pH7.0)緩衝溶液を用いて測定した。得られたcyclo-(LK)_8及びBranch-(LK)_8は,TOF/MS,HPLCおよびNMR分析により,目的の環状を形成していることが示された。Tris-HCl(pH7.0)緩衝溶液中におけるcyclo-(LK)_8のCD測定の結果,cyclo-(LK)_8は500mMのNaClの添加をさかいにrandoum-coil構造からβ-sheet構造へと転移することが示された。1500mM以上のNaCl濃度では217nmのθ値より計算した結果,β-sheet構造の含有量は60%程度と見積もられた。これは,NaClの添加に伴うβ-sheet構造転移したcyclo-(LK)_8の析出が原因と考えられる。Branch-(LK)_8も同様に,randoum-coil構造からβ-sheet構造へと転移した。また,200mmのNaClを添加した際にpyrのエキシマーに基づく発光が観察された。これは,pyr基がお互いに近接した構造が形成されたことを示す。AFM並びにTEM観察の結果,ペプチド部の直線性が失われるにつれ,アミロイド線維のアスペクト比が減少することが示された。以上の結果は,高配向性ナノファイバーの構築と,この構造を鋳型とした3次元集積化への展開が可能であることが示唆された点で非常に重要な結果と考えられる。今後はは,形成されたアミロイドフィブリルの形成挙動の解析と構造解明を目的とし,外的要因(Ph,温度,イオン強度,濃度依存性,溶媒依存性,温度依存性)について検討を行うことをにより,アミロイド阻害剤としての展開が期待される。
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