研究概要 |
本研究では,半導体/強磁性体接合を作成し,界面におけるスピン依存伝導に関する研究を行い,スピン偏極電子の高効率注入,および,高効率検出が可能な半導体/強磁性体電極を作成することを目的としている。平成19年度には,強磁性体/半導体接合電極を用いたスピン検出特性,高スピン偏極電子生成層となる半導体歪み超格子層のスピン偏極特性について研究を行った。 まず,ハーフメタル材料と同様に面内磁化を持つ強磁性体/半導体接合試料を作成した。前年度の成果に基づきp型GaAs基板裏面にオーミック電極となるAuZnNiを蒸着し,表面にAl_20_3酸化膜,COFe,NiFeをスパッタ成長させたのち,フォトリングラフイ,イオンミリンダにより試料を200μm平方に加工し,その四方をAl_2O_3,酸化膜で囲い,Cu電極兼保護膜を成長させたトンネル障壁試料を作成した。 SQUID磁力計を用いて試料の磁化曲線を測定し,保磁力,残留磁化など磁気特性評価を行い,面内磁化膜の形成を確認した。次に,偏光子,光弾性変調器を用いてGaAs基板層の円偏光励起することにより,光電流のスピン依存性について研究を行った。印加電圧依存性,印加磁場依存性の測定を行い,光電流に明確なスピン依存性を観測した。 さらに,より明確なスピン依存性を測定するため,90%以上のスピン偏極度を持つ電子の生成が可能なGaAs-GaAsP半導体歪み超格子試料を作成した。強磁性膜を成長させる前に試料のスピン偏極特性について,円偏光発光,光電流測定,X線回折測定により評価を行い,スピン偏極度が試料の界面状態に強く依存することを明らかにした。
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