研究課題/領域番号 |
18760022
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用物性・結晶工学
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新高 誠司 理化学研究所, 高木磁性研究室, 基礎科学特別研究員 (60392057)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2007年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2006年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | 強相関電子系 / フラストレーション / ヘビーフェルミオン |
研究概要 |
大きな電子比熱係数γを示す重い電子(heavy fermion, HF)系は大きなゼーベック係数を示すことからよい熱電材料として期待されている。通常HF状態は金属間化合物において観測され近藤効果により理解されるが、スピネル型化合物であるLiV_2O_4は酸化物でありながら〜200mJ/VmolK^2という金属間化合物の示すHF系に匹敵する大きなγを示す。その起源として近藤機構と等価なモデルが有力とされていたが、純良な単結晶を用いた反射率測定および圧力下電気抵抗測定において近藤格子系と対照的な挙動を観測した。まず反射率から求めた光学伝導度において、スペクトル強度の移動が近藤格子系では10-100meVの範囲で起こるのに対して、HV_2O_4では5eVまで広がっていることが明らかになった。これは絶縁体に近い悪い金属と類似しており、HF形成に関して電子相関の重要性が示唆される。次に圧力効果について、近藤格子系を加圧するとHF状態から通常の金属で見られるフェルミ液体に近づくが、LiV_2O_4では9GPa以上において明確な金属絶縁体転移が出現する。金属絶縁体転移温度は加圧につれて増加を示す。圧力誘起絶緑体状態の電気抵抗が単調に増加し異常を示さないことから、金属絶縁体転移と同時に電荷秩序が形成されていると考えられる。また加圧することで絶縁体が安定化されることから絶縁体相におけるVのクラスター形成が示唆される。これは昨年度我々が行ったEXAFSの結果と合致する。また温度-圧力相図よりLiV_2O_4のHF状態は圧力下で生じる電荷秩序の融解によって出現していることが明らかになった。HFの起源は電荷を含めた電子の内部自由度によるエントロピーを取り込んだ準粒子によると考えられ、そこでは幾何学的フラストレーションが重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究よりLiV_2O_4のHF状態は従来とは異なるメカニズムで形成されていることが明らかになり、新しいタイプの熱電材料創成の指導原理につながっていくと期待される。
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