研究概要 |
試作した透過型超音波変調分光計測システムを用いて,光散乱体深部の超音波変調分光計測の検討を行った。試料にはイントラリピッドをシリコーンゴムに混合して作製した厚さ10mm,等価散乱係数1.1mm^<-1>の生体模倣試料を用いた。この試料の表面から深さ5.5mmの位置に,酸化へモグロビン及び脱酸化へモグロビンを溶解した厚さ0.5mm,大きさ4mm×4mmの光吸収物体をそれぞれ配置した。試料からのスペックルパターン画像を波長比較すると,波長770nmと780nmの画像ではスペックルの位置が変化し,波長780nmと825nmの画像ではスペックルパターンの明暗が反転する結果となった。また,超音波変調光信号を数値化して波長依存を調べると,酸化へモグロビンと脱酸化へモグロビンの試料に対して異なる応答をすることが分かり,その変化には微小な変化と緩やかな変化の2種類が含まれることが分かった。さらに,光源のパルス選択において電気光学素子と音響光学素子とを導入することで,光源のパルス選択における信号雑音比を12倍に高めることができた。モンテカルロシミュレーションを用いた数値解析では,超音波と光の相互作用の原理について検討した。解析パラメーターとして,屈折率変化に伴う位相変化,光散乱係数と光吸収係数の変化,光散乱粒子の移動に伴う位相変化,光散乱粒子による散乱分布変化について検討すると,いずれの場合においても超音波変調光が発生することが数値解析で分かった。
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