研究概要 |
機械,構造物の高効率化や高精度化に対する社会的要請が高まるにつれて,その軽量化や高速化,静粛化が指向されるようになってきた。これに基づき,系内の非線形要素を介して発生する非線形振動の挙動を把握することは,工学上重要な課題となっている。本研究では,種々のはり構造物を対象として非線形振動実験を行い,増分伝達剛性係数法および低次元モデルによる安定判別の解析結果との比較を行うことで,これらの解析手法の妥当性の検証を行い,さらに,非線形振動実験により得られたデータから,定常周期解の不安定化現象に対して大きな影響を与えるモードの特定を行う。具体的には,実験から得られる振動波形に対して主成分分析法を適用することにより,定常周期解の不安定化に対する寄与率の大きいモードを特定することを目的としている。 本年度は,まず片もち薄板の強制振動の実験モデルの製作し,強制振動実験を行い,時刻暦波形・周波数応答の収集,および収集した波形に対する振動主成分分析法の適用を行った。また,実験モデルを数値的に同定し,数値シミュレーションを行うことによって得られた時刻暦波形・周波数応答および主成分分析結果の比較を行った。その結果,実験による結果と数値解析の結果はよい一致を示した。また,加振周波数に対する各モードの寄与率を明らかにした。さらに,数値解析においては系の非線形性を考慮した解析を行い,非線形強制振動に対する各モードの寄与率を明らかにしたほか,不安定振動に対して影響の大きなモードの検討を行った。 なお,系の不安定振動に対して影響の大きなモードを実験的に同定するまでは至らなかった。この原因は,不安定振動の観測に予想以上に時間がかかってしまったこと,および解析プログラムの不備があったことが挙げられる。今後,実験により特定した安定性に対する支配的モードの事前評価法についての検討を行いたい。さらに,支配的なモードの事前評価法の確立を目指したい。
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