研究概要 |
本研究の目的は,外力を断続的に与え,柔軟構造物に生じる大振幅の振動を抑制することである.前年度までの研究では,柔軟構造物のモデルとして,座屈した金属板(長さ165mm,幅40mm,厚さ0.5mm)を用い,Duffig系を構成した.材質はSPCC,SUS430の二種類を用いた.結果としてどちらの金属板でも制振効果が得られた.このメカニズムは「系の安定解が複数あるパラメータ領域において断続外力を与えることで,系の振動状態が振幅の大きな安定状態から振幅の小さな別の安定状態へと跳躍する」ためであると説明できる.即ち,本手法は系の非線形特性を利用した制振法であるといえる. 本年度は,上記の制振手法をより現実的なフレキシブルアームに適用することを目的とし,長さ800mm,幅19mm,厚さ3mmの鋼板(SPCC)に対して制振実験を行った.本制振手法は,系が背骨曲線状の共振特性を持つことが必要であるため,鋼板先端から265mmの位置にネオジウム磁石を配して非線形性を強めた上で実験を行った.その結果,長さ800mmの鋼板でも前年度同様の制振効果が得られることを確認した.なお,この鋼板はインパクトダンパを用いても制振効果が得られるが,断続外力による制振手法の方が少ないエネルギーで制振が可能なこと,無重力下でも使用可能なこと,系の共振特性を調べることで使用条件が明らかになる等の利点がある.特にフレキシブルアームを宇宙空間で用いる場合に有効な制御手法であると期待できる.
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