研究概要 |
平成19年度の研究において,以下の成果が得られた. 本研究以前に提案している四輪アクティブ操舵則と本研究の平成18年度の成果である操舵反力制御法について,生態学的インタフェース設計の視点から再考察を行った.その結果,従来車両や他の操舵反力制御法などと比べて,四輪アクティブ操舵則が運転者にとって直感的にわかりやすく,車両状態の把握が容易な触力覚情報提示系となっていることを示した. しかしながら,昨年度のドライビングシミュレータ実験において,ステアリングホイールを一定に保ったまま加速するような定常円旋回時には,操舵反力トルクを提示するだけではタイヤ力の飽和に気づきにくいという結果が得られていた.そこで,操舵反力トルクいう触力覚情報に加えて,摩擦円の概念に基づく加速度情報を視覚的に提示するようなマルチモーダルインタフェースを提案した.このインタフェースでは,運転者がステアリングホイールを通じて入力する横加速度指令値とアクセル・ブレーキペダルを通じて入力する前後加速度指令値と,車両に実際に発生している横・前後加速度を同時に表示する.たとえば,運転者が入力する指令加速度が実加速度よりも大きくなるという状態は,指令値どおりに加速度が発生していない,すなわちタイヤ力が飽和している状態を表しており,視覚情報の付加によって,触力覚情報提示だけの場合に比べて,車両状態をより容易に把握することが可能になる.このような状況では,指令値と実加速度が一致するような安定状態になるように,運転者はステアリングホイールを切り戻すか,減速したらよい.つまり,本研究で提案する視覚情報と運転者が行うべき運転操作の対応関係が明確なインタフェースとなっている.本年度実施したドライビングシミュレータ実験では,触力覚情報提示だけの場合よりも視覚情報提示をあわせて行った場合に,そのような安全運転操作がより促進されるという結果が得られた.
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