研究概要 |
社会の高齢化にともない,看護士に代わって体の不自由な人の生活支援,運動補助を行うことのできる福祉ロボットに対する需要が高まっている.これらの人の運動を補助することを目的とするロボットでは,できる限り人に違和感を与えずに,目的の運動状態へ人を誘導することが求められる.そこで本研究課題では,このように患者に対して優しく運動アシストを行うことのできるロボットを構成すべく,人の意図する動作の変化にすばやく適応して,柔軟なアシスト動作を次々と生成することのできる人機械協調システムの構築を目指して研究を行った.まず18年度では,現在の時刻から一定時間さかのぼった運動データのみに基づいて,最小2乗誤差のフレームワークで人の意図する動作を推定するレシーディングホライズンパラメータ推定器と,その推定された人の運動状態に基いて最適なアシスト動作を逐次決定する最適制御系から構成される適応モデル予測制御を構成した,これにより,異なる人の運動状態に対して適応的に最適なアシスト動作を生成することのできる制御系を構成することができたが,本手法では,人のように素早く動作意図が変化する系に対しては対応することができず,推定器が不安定になるという欠点があった.そこで,19年度では,推定器の改良を行い,レシーディングホライズンカルマンビズイフィルタとモデル予測制御を結合させた,新しい適応モデル予測制御則を構成した.そして本提案制御則の安定性を理論的に解析するとともに,計算機シミュレーションによりその有効性を解析した.本手法では人の動作意図パラメータの時間変化の上限が与えられているならば,常にシステム全体の安定性を理論的に保証することができ,また外乱ノイズに対してロバストであるという大きな利点がある.そのため,本手法は実際の福祉の現場や生産ラインにおいても安定なアシスト動作を実現することができると十分期待される.
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