研究概要 |
近年,機能性の酸化物を用いて新規な電子デバイスを創製する酸化物エレクトロニクスの分野が注目を集めている本研究では,半導体的な性質と強誘電性を併せ持つ強誘電性半導体を開発し,新規な不揮発性記憶機能を有する薄膜トランジスタ(TFT)の実現を目指した.強誘電性半導体として3つの物質に着目し,それぞれ薄膜を作製してその物性を調べた最も有望な物質であると考えたRMn0_3系強誘電体(Rは希土類元素)では,YMn0_3およびYbMn0_3の薄膜を作製した.10^<-2>A/cm^2程度のリーグ電流を示す薄膜においても強誘電性を確認することができ,電位伝導性と強誘電性の共存が可能であることを示す結果が得られた.一方で異方性を有する結晶でありながら,電気伝導特性の結晶方位依存性は確認できず,提案するTFTに応用するためには課題があることがわかった.また,大きな自発分極を有する一方でリーグ電流が大きくなりやすい物質として知られているBiFe0_3についても強誘電性半導体となる可能性があると考え,薄膜の電気的特性を調べた原子間力顕微鏡を用いた微小領域のリ-ク電流特性の解析から, BiFeO_3の電気伝導機構およびMnの微量添加によりリーグ電流特性が変化する起源について考察した.さらに,電気伝導特性の結晶方位依存性が大きくなることが期待できる電荷秩序型強誘電体YbFe0_3の薄膜の作製も行った本研究において初めて薄膜の合成に成功し,バルクで報告されている特徴に類似した電気伝導特性を示すことを確認した.本研究では,試作したTFTの動作の確認には至らなかったが,強誘電性半導体としての特徴を有する物質が存在することを見出すことができた.
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