研究概要 |
ナノ粒子を格子状に配列させるためには,粒子サイズの均一化が特に重要である。Siナノ粒子の表面修飾分子としてアクリル酸の他に,リナロールやオイゲノールといった炭素二重結合を分子端に有する有機分子を4種類ほど試験的に使用してヒドロシリル化を行った。その結果,表面修飾子を変えることがSiナノ粒子の様々な粒径での単分散化に有効であることを見出した。具体的には,アクリル酸を使用した場合,Siナノ結晶の直径は1.5〜2.5nmのものが効率良く作製されるが,リナロールの場合は1.4nm,オイゲノールの場合は約1nmとなることを見出した。これらのナノ粒子を化学自己集合により,ミクロンサイズの3次元格子状に配列させる実験を進めてきた。しかしまだ論文発表できるほどの高品質の格子配列は得られていない。これは格子配列化の手法に問題があるわけではなく,得られる表面修飾Siナノ粒子の量が少ないことに原因がある。これまでに実験条件を調節しながら作製の規模を少しずつ拡張してきたが,現在,さらなる大規模化を進めている。上記の粒径におけるSiから得られるフォトルミネッセンス(PL)は,緑色から青色であった。これらのPLは室内照明下において肉眼で確認できる強度であり,表面修飾がPL強度を弱めるものでないことを確かめた。これは発光材料への応用にとって好ましい結果である。また,Siナノ粒子の表面酸化がPLに及ぼす影響を調べるべく,比較のためにゲルマニウム(Ge)ナノ粒子を用いた同様の実験を行った。その結果,Geナノ粒子は照射光の波長を変えることで,光酸化の進行を細かく調節できることを発見した。この発見は当初期待していなかったことであるが,サイズ制御の点で興味深い現象であり,今後,精力的に取り組むべき課題である。
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