本課題研究では、ダイヤモンドの低抵抗化を目標に、アクセプター不純物であるホウ素の高濃度ドーピングを試みた。取り込み効率を向上させるために基板表面のナノ構造化を行ったが、本研究で試みた薄膜合成の条件下では顕著な改善が見られなかった。一方でプラズマの高密度化は取り込み率の向上に有効であり、マイクロ波投入電力が低い場合でも効果が確認された。また高プラズマ密度化することで合成の最適条件を高メタン側に移動する事を明らかにした。 得られた結晶の欠陥を、ショットキーダイオードを形成して評価したところ、ダイオード特性としては耐圧が1kV以上と優れた特性を示したが、深いエネルギー位置にある欠陥の電子状態を評価したところドナーおよびアクセプター型欠陥がそれぞれ比較的高い欠陥密度で形成されている事が分かった。またカソードルミネッセンスによる発光分光測定を行ったところ、アクセプター濃度が10^<19>cm^<-3>を超える高濃度結晶の場合には、ホウ素の束縛励起子の再結合発光とは発光波長が異なる発光スペクトルが得られた。この結果は、高濃度にホウ素をドーピングした場合、ホウ素が凝集した形態を採るなど、低濃度の場合と異なる電子状態を形成していることを意味している。 デバイス応用を念頭に置いた高濃度ドーピングを行う場合には、深い準位やホウ素の取り込み形態を含めた合成条件の検討が必要である。
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