本研究の目的は、共鳴トンネリング現象を用いた高効率なフォトニック結晶曲がり導波路の開発である。本年度は前年度に引き続き、二次元フォトニック結晶導波路の作製条件の最適化および、光学特性を評価するための評価系の構築を行った。 導波路作製においてはSilicon on Insulator (SOI)基板のシリコン層に半径150nmの円形空洞がピッチ425nmで三角格子状に配置されたものを電子ビーム描画リソグラフィおよびリアクティブイオンエッチングにより作製し、その後、バッファードフッ酸処理によりシリコン層下部の酸化膜を除去した。この空洞を導波路構造に沿って取り除いたパターンを作製することによりその部分を導波路とした光回路素子を構成することができる。この構造では高次1次モードが導波層の伝搬方向の周期性によりカットオフとなるため、波長1.4μm〜1.6μmの帯域においてシングルモードとなることを数値シミュレーションにより確認した。さらに曲がり導波路においては、共振器を形成するため配置する曲げ部の空洞の径を調整することで、透過波長帯域を広げることができることを数値シミュレーションにより確認した。また、作製した導波路の透過特性を評価するためにデバイスへの入射・集光系、調芯用微動ステージ、偏光制御系および波長可変光源を用いた評価系を構築した。しかしながら、今回作製した導波路における1.5μm帯の波長の光導波を確認することができなかった。今後、作製条件の調査を引き続き進める予定である。
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