研究概要 |
平成19年度の実施内容は、昨年度までに実施してきた解析結果とそれを踏まえて検討した実験模型を用いて、単杭の地盤変位と慣性力を同時に受ける杭基礎の動特性の評価を行った。本実験は、せん断土槽に乾燥砂を表層地盤として設置し、そこに杭頭をアルミ製フーチングによって拘束した2本杭を埋設した。2本杭とした理由は、双方の杭をフーチングによって杭頭拘束することで、昨年度の解析的検討で用いた回転拘束条件を満足させることを目的としている。実物と模型の相似比は1/40とし、力の比を一定とした香川・国生の相似則を用いている。杭はアクリル製で、杭側壁にアクリル用ひずみゲージを配し、基盤、地中、地表、フーチング(水平、鉛直/回転)の加速度を計測するために、ひずみ式加速度計を設置した。加振は基盤からの調和振動とし、表層地盤の一時卓越振動数となるように加振振動数を調整した。加振レベルは、地盤の非線形性(ひずみ振幅依存性)の度合いを調整するために、加速度振幅を20Gal,50Gal,100Gal,200Galの4ケースとした。これにより、表層に生じる平均せん断ひずみは、0.00001から0.001のオーダーを再現することができた。一方、本実験では慣性力と表層地盤のせん断弾性ひずみを一定とした実験を再現する必要があり、慣性力の調整として、フーチング天端にアルミおよび鉄で製作した金属板の厚さと枚数を細かく調整し、これにより計測される加速度と当該重量の積(慣性力)が所定の値を満足していることを全てのケースについて確認した。以上の検討の結果、表層地盤のひずみレベルが低い条件においては、理論解、あるいは解析解に見られる現象、特に最適杭径の発生を明確に確認することができた。これにより、これまで数理モデルによってのみ評価されてきた最適杭径が、模型実験によっても確認されたことになり、極めて重要な知見が得られたものと思われる。一方、ひずみレベルが大きい条件下においては、慣性力による周辺地盤の非線形性の影響を伴って、最適杭径が不明確になる場合のあることがわかった。
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