研究概要 |
本研究では,中山間地域における水道システムの統合化を背景に,水道事業施設の耐震性や冗長性,復旧機能性に関する評価手法を提案することを目的としている.とくに近年では,甚大な被害をもたらす地震が多発する中,水道事業体においても事業規模を問わず甚大な被害に見舞われている.各事業体では,管路更新および耐震化などの事前対策と,被災後の初動体制や連絡網の強化さらには地震時緊急対応マニュアルの整備などの事後対策の両面から地震防災対策が実施されている.しかし,事前対策を実施するためには,水道事業体の現状把握が必要不可欠となってくる. まず,管路耐震化状況を定量的に評価する手法を提案するとともに事業規模による耐震化低減効果について明らかにした,給水人口規模が小さくなるほど地震に対して脆弱になることが分かった.また,給水人口2万人以上の事業体では,今後10年間の更新方法によって危険度を大幅に低減できることが明らかになった.それ以下の事業体では,管路の耐震化だけでなく,震後の緊急対応の充実化を図るなど事後対策と併せて対策すべきであると考えられる.また,昨年度から分析している中山間地の道路閉塞評価と将来的にリンクさせてシステムとしての評価方法につなげることが課題である. 一方で,事業体の緊急対応マニュアルを収集し,事業規模におけるマニュアル整備状況と緊急対応時の組織状況について分析した.災害時の指令系統を計画している事業体が多かったが,事業規模が小さくなるにつれて職員数が減り,災害担当部署に数名しか配置できなくなることが明らかになった.
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